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コラム

2009/9/26

ハンセン病について伝え、交流する

ハンセン病の患者を強制的に隔離する「らい予防法」は1996年に廃止されました。患者だった人の中には、そのまま療養所に住んでいる人もいますし、療養 所の外に出て、生活している人も1500人ほどいるとみられています。しかし、根強い偏見や差別のため、住む家を探す時に苦労したり、家族や親族とのつき あいが今もできない状況の人も多いのです。

崎山敏也記者が取材したのは「ハンセン病問題について考え続けよう」と、3年前に結成された「ハンセン病首都圏市民の会」の活動です。
「ハンセン病首都圏市民の会」は例えば、強制的に隔離されて差別された、実際の体験談を聞く集まりや、国の政策の歴史や問題点を学ぶ「連続講座」などを開いています。
2009年9月13日には、東京・東村山市にある療養所「多摩全生園」の集会室で第10回目の講座が開かれ、長年治療に携わってきた、ハンセン病専門の医師の並里まさ子さん(「おうえんポリクリニック」院長)が「ハンセン病の基礎知識」と題して話をしました。

並里さんは基礎知識に入る前に、まず「『誤ったハンセン病観は、誤った政策を生む』。これにつきるんじゃないんでしょうか」と切り出しました。そして、「ハンセン病に対して正しい知識を、正しい考え方を持つ社会でこそ、みんなが幸福になる、と思います」と続けました。
療養所を出た退所者の中には後遺症に苦しむ人も多いですし、高齢になると他の病気にもなります。しかし、ハンセン病にかかっていたことを知られて、差別さ れることを恐れると、病院にも行きにくくなります。また、病院に行っても、ハンセン病にかかっていたことを医師に言えなかったり、医師にハンセン病の正し い知識がないために、適切に対応できない、ということもあります。
講座で並里さんは、感染や発症のしくみ、治療法などについて、最新の医学でどこまでわかっているか、丁寧に話したうえで、「ハンセン病は特別な病気ではな く、一般にある感染症の一つなんです。本来、他の病気と変わらず、地域で普通に治療すべきなんです」ということを強調していました。

以前は国立の療養所に勤務していた並里さんですが、療養所での治療をめぐる「医療過誤訴訟」で、患者の立場にたって裁判で証言したことなどもきっかけにな り(裁判は一審で国に全面勝訴、その後和解)、埼玉県所沢市に4年前、自分のクリニックを開きました。「退所者が普通に診てもらえる場にしよう」と考えた からです。
クリニックは順調に受診者も増え、近くに住む人も退所者も同じように、皮膚科や内科の患者としてやってきています。
講座の後に、あらためて並里さんに話を聞くと、「近所の人と退所者が一緒に座っていて、順番を待っている、その姿が何よりです。クリニックがうまく地域にとけ込んだというか、地域の方々が存在を認めてくれたのでしょう。それが一番ありがたいことです」と話していました。

講座の参加者は70人ほど。療養所にいた方の体験は聞いたことがあったけど、もっといろいろ学びたいので、と参加した二人の学生からは「別の面からハンセ ン病を学ぶことができたので、よかったと思います」「他の病気とかに対して偏見を持つような時でも、根本的に直るんだよ、という知識がないと、こういうこ とは繰り返すから、大切だと思います」という感想が聞かれました。
また、並里さんの後には、退所者の山城正安さんが、「55年ぶりに小中学校の同窓会に参加した」話などをしました。「昔だったら想像できないけど、今は自 然に話せるようになりました。聞いてくれた人に一人でも、僕たちのことをわかってもらえれば、と思って、こういう場に出てきて、話をしているんです」と崎 山記者に話しました。

「ハンセン病首都圏市民の会」では、講座のほかにも様々な活動を行っています。
例えば、全生園のある東村山市の公民館などで、療養所を身近に感じてもらおうと、全生園の歴史についての展示を行ったり、交流を深めるため、入所者、退所者とお茶を飲みながら語り合う会を開いています。
また、35ヘクタールの広さがある全生園には武蔵野の豊かな自然が残っています。桜並木や梅林などおよそ3万本の樹木があるのですが、その多くは、子供も 持てず、故郷にも帰れない入所者が自分で植えて、子供のように大切に育ててきたものです。「首都圏市民の会」では2009年5月に、「木々に込めた思いを 感じてほしい」と、園内を散策しながら、入所者の話を聞くイベント「全生園~お話の森」を行いました。

療養所の入所者や退所者が老後を地域で安心して過ごせるため、そしてハンセン病への理解を深めてもらうための活動が続いています。