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コラム

2006/01/26

<クマさん日記>踊り

白鳥の湖やクルミ割り人形を演じるモスクワバレーにうっとり・・・どうしてこれほどまでに優雅でもの悲しい身のこなしができるのだろうか、と感動しながら観ていたら、1人の東洋人が出て来た。以前には考えられない事だが、現在モスクワのボリシェイユバレイ団で主役を演じる彼は、日本人男性だという。バレー留学してそのままモスクワに残り、同じ団員の女性と結婚して現在もモスクワ暮らしを続けている。そう言えば、数十年前にスペインでフラメンコを踊っている日本人女性がいたのだから、不思議でも無かろう。

繊細で優美なバレーの世界とは打って替わって、庶民の民族舞踊となると、その土地の環境や生活の匂いが色濃く演じられる。コサック、ポルカ、コーカサス地方の家畜追い歌などからは、どうしてもバレーの世界は連想できない。

ところは変わり、地中海沿岸アンダルース音楽は、アラブ音楽に似てゆったりと重たく流れる旋律であるが、踊りは完全に異なる。アラビアダンス程の躍動感は無く、しかし抑えた動きの中に力強さを表現している。アラブ音楽とアンダルシア音楽の区別を知るには数年かかるが、踊りは一見して違いが分かる。

地中海を南下してアトラス山系に達すると、 肩を細かく震わすベルベルの踊りがあり、あーこれは随所に羊の行動が採り入れられた踊りだな、と直感する。更に南下するとサハラ遊牧民の踊りがある。この踊りは何とも悩ましく、見ていると民族のルーツなど考えるゆとりは無くなる。ほの暗いランプの明かりに浮かぶ、踊り子の大きな瞳に魅了され、心臓が破裂しそうに興奮し、思考は完全に停止する。

さて民族舞踊だが、今日では住民移動やその後の学習などにより、現地の村人達でさえ、自分たちの原点を探るのが難しくなってきた。そこで、民族のオリジンを探る手段の一つに、彼等の民族舞踊を披露してもらうことにした。
ガーナの首都アクラから西へ20km余り、海岸から400㎞内陸に入った村に立ち寄り、村長に民族の踊りを見せてくれないかと頼んだ。自分は上手に踊れないので、近隣の婦人達に踊って貰おうと心安く引き受けてくれた。1曲、2曲、3曲と続き、それに伴う踊りが披露されたが、どうも想像していた踊り方とは違う。本来、民族の踊りと彼等の仕事には関連性があるはずなのに、そこの村の踊りは農耕民の踊りでもなければ、狩猟民の踊りでもない。5回目の踊が終了した時点で、休止してもらった。どうも、ハワイのフラダンスに似た振り付けが多い。フラダンスよりは個々の動作と間繋ぎが早いが、随所に類似動作が観られる。村の長老に村の沿革を訊ねると、昔海岸で津波に襲われ、この地に移住して来たとの報である。なるほど、なるほど。ボルタ湖の北、その昔、上ボルタと言われた地域、現在で言えばブルギナファソ南部地域の住民は、代々農耕を営む農耕民で、踊り方もちゃんと足が地に着いている。方々で見た農耕民の踊りは、躍動的ではないが、大地に根を下ろし、大空を仰いで、これから生きていくんだと言わんばかりの、強い意志を感じさせる。

フイリピン、マニラのショッピングモールの一角に、現地に伝わる代表的な民族舞踊を見せてくれるレストランがある。出し物は、南から北へと5民族の踊りである。南部ミンダナオ島スルー地方の民族舞踊は、銅鑼をならしながら踊り、どことなくインドネシアのワヤンを彷彿とさせる。北部ルソンの山岳民イフガオ族は、首狩り族として知られた部族であるが、彼等の踊りを見る限りでは、土地を愛し、自然を崇める農耕民族の踊りそのものであった。またフイリピンではピナツボ火山の爆発により、山岳民族イタ(アイタ)の存在がクローズアップされた。本来狩猟民とされる彼らの踊りには、飛んだり跳ねたり、奇声を交えて躍動的に踊る姿は無く、森の動物、樹木、月、風雨が織り込まれた動作が多く、サバンナの狩猟民の踊りとは違って、静かな身のこなしであった。彼等の祖先は、狩猟 よりも採集によって、生活を支えてきたのだろうと想像した。

森から川を下り、見晴らしの良い海岸に到達すると、沿岸には漁民部落が点在する。波 静かな沿岸漁民の踊りには、波の動きと、一日中吹く微風が椰子の葉を揺らし、さらさらと擦れる葉音を奏でる光景が踊りに投影されている。フラダンスやフイリピンのティキティキは、そんな雰囲気がこめられている。

同じ沿岸漁民でも、珊瑚礁やラグーン、湖沼漁民の踊りの中には、磯に戯れる小魚を追う人々の姿が投影されていて面白い。琉球舞踊の「たんちゃめ」などが正しくその例で、チャカチャカしながら、軽快なカチャーシーのリズムに乗って、うるめ鰯かシルバーサイドなどの小魚を掬い、それをいち早く売り歩く動作が織り込まれている。コマネズミの動きを連想させる、ちょこまかと細かい動きを繰り返す。

機関誌ニルヴァーナ(NGO)9号に掲載された「クマさん日記」シリーズより抜粋