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コラム

2006/01/26

<クマさん日記>地中海

南欧は「北海道と同じ緯度に位置しているんですよ」と言うと、「へーえ」と言う返事が返ってくる。更に言えば地中海を挟んだアフリカ大陸北岸でさえ、東北と同じ緯度にある。因みにチュニジアの首都チュニスと同緯度にあるのは、仙台市である。

チュニスは古代ローマ帝国に対して闘いを挑み、象でアルプス越えをしたハンニバル将軍が活躍した、カルタゴに隣接する。乾燥性の亜熱帯気候で、雨季乾季の区別がはっきりしている。地中海性気候の特徴は、冬に雨が降り、この時ぐーんと気温が下がるので、ボルヌースと呼ばれる、羊毛で織ったマントをはおる。地方ではいまだに陰暦で、農・漁業を営んでいる。

5月になると、大西洋を回遊していた黒マグロがジブラルタル海峡を通り、産卵場所を求めて穏やかな地中海に入ってくる。沿岸にはマドラグと呼ばれる、大がかりな鮪定置網がしつらえてある。鮪漁を皮切りに、鯖、鰯、イカ漁が続く。殆どがランパラと呼ばれる集魚灯漁法である。日本のイカ釣り船や、フィリピンのバスニグ漁は集魚灯が本船についているが、ランパラ漁は一人乗りの小舟にカーバイドを炊き、2、3時間かけて集魚する。頃合いを見計らって本船が集魚舟に接岸し、網の端を渡し、魚群を巻く。極めて経済的で効率的な漁法である。

時々せっかく集めた魚群にイルカが侵入して、魚を追い払う。「くそ、撃ち殺してやる!」と船長は水面目がけて自動小銃で威嚇射撃をするが、間違っても打ち捕らえるのを、見たこともなければ聴いた事もない。

陸地では、一年の半分は夏で、冷たい冬との間に短い春と秋がある。食糧生産も祝祭事も全て夏に行われるので、夏は本当に忙しい。寒気を残した風の中でミモザが開花すると、やがてヒナゲシ、ラベンダー、オリーブ、サフラン、薔薇、葡萄、かんきつ類と、先を競い合う。蜂や蝶が飛び交い、時には招かれざるバッタやイナゴの大群が襲来し、小麦を食い荒らす。地中海沿岸では、温暖な気候に育まれて香草や薬草が多く、古くから住民の生活の中でよく利用されて来た。そして、現在も世界の香料市場の動向を左右する、南仏グラス。薔薇油1グラムを製造するのに、新鮮な薔薇の蕾が2千個以上必要である。世界の三大産地(南仏グラス、モロッコ南部、ブルガリア東部の薔薇渓谷)では、何処も変わらず、黎明の中で籠を担いだ乙女達が、朝露に濡れた蕾 を手で摘んでいる光景を目にした。胡椒、肉桂、丁字などの東洋貿易でもたらされた高価な香辛料を入手する事が困難な地中海沿岸庶民の家庭では、庭先にネギ類以外にセージ、バジル、オレガノ、フェンネルシード、ローズマリーなどの香草を栽培して利用した。口の悪いローマ貴族達は、これら自家生ハーブを、貧者の香辛料と言った。香水はエジプトからギリシャへ渡り、ギリシャではヒポクラテスによってハーブが薬源として医療に活用された。その技術はイブンシナ(アラブ人)により、ローマを経て、やがてフランスとその周辺諸国にも伝搬した。

こと、香料に関して言えば、アラブやアマハラ(エチオピア)の貢献は大きい。アラブ人はアルコールの発明により、植物性揮発油の抽出を容易にして香油を生成した。アマハラには、薫香を煎る事で、香を高める技法を編み出した歴史がある。

機関誌ニルヴァーナ(NGO)8号に掲載された「クマさん日記」シリーズより抜粋